三宅村の復興に伴う基本的な構想(案)中間報告


三宅村の復興に伴う基本的な構想
(案)
中間報告

平成14年4月
三宅村復興計画策定委員会
1 基本的な構想の目的  
 平成12年6月に発生した大噴火から2年が経過しようとしている。今回の雄山の噴火は2,500年ぶりの大噴火と言われている。世界的にも類をみない有害な火山性ガスの大量放出が今日も続き、いつ全面掃島がかなうかは依然として不明確なままである。三宅村においては、現在もなお続く島外避難中にあっても、来たる帰島時に噴火災 害から一日も早く立ち直るための社会基盤整備対策を講じるとともに、将来の噴火などの災害に備えた災害に強い島づくりと、これまで 島を支えてきた農林漁業などの地域の基幹産業の振興との調和を図りながら観光産業を核として、三宅島独自の再建策の構築に早急に取り組む必要がある。
 この復興計画の基本的な構想は、「第三次三宅村総合計画」が将来像として掲げている「人と自然にやさしい健康で豊かな村」を、今回の噴火災害にあっても依然として村の基本方針と考え.島民と行政が 共通の認識を持ち、三宅村の復興に向かって取り組みを進めるため、 復興の方向性と施策の概要を示すものであり、復興計画の基本となるものである。  
2 復興計画の基本的な構想
(1)基本理念  
 三宅島は、黒潮の真只中にある火山島で、アカコッコに代表される多くの野鳥や多彩な海洋生物、あるいは多様な動植物などが生息し、豊かな自然環境が温存されているとともに、海流、火山など自然の厳しさや地球のダイナミズムを肌で感じることができるというように、自然の豊かさと厳しさのニ面性を併せ持った島である。 復興計画では、今回の噴火災害の教訓や問題点を踏まえ、島民が「安心して」、「活き活き」、「安全に」生活できることに加えて、三宅島らしさを追求し、時に厳しさをみせる自然と共生しながら、三宅村の目指す将来像である「人と自然にやさしい健康で豊かな村」を実現することを目指して、次の3つを基本理念と定める。  
■三宅島民の生活再建を最優先とした復興計画とする(生活再建)
■火山をはじめとした島の自然と三宅島民の文化や伝統を活かし、世界に誇れる観光地としての三宅島振興を実現するためのきっかけとなる復興計画とする(地域振興)
■噴火などの災害に備え、災害に強い三宅島づくりを目指した復興計画とする(防災しまづくり)  
 下の図は、社会基盤施設の復旧を基礎として、「生活再建」「地域振興」「防災しまづくり」という復興の3つの柱がお互いに関連しあいながら、島ぐるみでー体的に地域運営システムを形成し、三宅島が「人と自然にやさしい健康で豊かな村」といった災害復興の花を咲かせることをイメージしたものである。  
  (図省略)
(2)状況が不確定な中での復興計画策定の特殊性  
 雄山から放出される火山ガスの量は依然として高い値を示しており、島民の全面的な帰島時期は未だに目処が立たない状態である。そうした状況のなかで三宅村の復興計画をいま策定する意義は、「帰島」は復興の通過点に過ぎないからである。帰島するまでに将来の青写真を整え、それまでの生活を支え、掃島後の復興事業をすみやかに実施できる体制をいまから作らなけれぱならないからである。そこで、三宅島の復興計画では、次の3つの事項を視野に入れた計画を定める。
@島外での生活が続く中でも、今すぐに取り組み始めるべきこと
A帰島までに整えておくこと
B帰島後に実施すべきこと  
3 基本方針
(1)生活再建  
〜三宅島民の生活再建支援策〜
 (島外での生活が続く中でも、今すぐに取り組み始めるべきこと)  
 全島避難によって「仮の暮らし」が始まってから2年が経とうとしている。今の状態がいつまで続くのか、だれにもわからない。「島に帰ること」だけを希望に毎日を耐え忍ぶにも限界がある。島外での暮らしが長くなるにつれ、今の暮らしをいつまでも「仮の暮らし」と考えていることは難しくなる。
 昨年、三宅村が行なったアンケートでも、「何をおいても帰島する」と答えた人は約46%であり、「生活の目途が立てぱ帰島する」と答えた人も約40%に及んでいる。50歳以上の島民の過半数が帰島を希望するのに対して、40歳以下の人では帰島に「生活の目途」が立つことを条件にする人が多数派をしめている。この結果は、「今、島外でいきていること」「これからも島外でいきていくこと」の意昧を真剣に考えることの大切さを示している。
 これからも島外で暮らすという前提にたって、「仕事のこと」、「子どもの教育のこと」、「事業を始めること」、「健康のこと」、「老後のこと」、「住宅のこと」、を見直してみる必要がある。不確定なことが 多く、今の生活を見直すことは決して楽なことではない。しかし、現 実から目を逸らしていても、状況は好転することはない。現実を直視することからしか、将来の糸ロは見つからないことは確かである。また、「三人よれぱ文殊の知恵」のたとえのように、一人だけで解決できないことも、皆がカを合わせることで解決することが可能になる。  
@すまいのこと  
 島外避難がはじまって以来、島民はみなニ重生活を送ってきた。避難先での島民の住宅については、現在、都営住宅などが無料で提供され、一応の生活の場が確保されている。しかし、生活再建という意昧からは.人々のつながりが豊かになる必要がある。そのため、現在の 居住地での人々のくらしに目を向けて、島民同士や近隣とのコミュニティづくりを応援していく。同時に、行政と島民とのかかわりあいについても強化していく。また、仕事などの都合で、他の都営住宅などへの移転を希望する場合にも、東京都を窓ロにして働きかけを行なう。
 三宅島の復興は、そこに住む島民と家屋財産があってこそである。 島外での避難生活が長引き、誰も住まない状態で数年経てぱ、島内の家屋は噴火災害による被害に加え荒廃が進み、多くの住宅は住むことができない状態になることが予測される。できるだけ家屋の荒廃を減 らすため、島民が各家屋の保護のために活動できるように村は支援策を強化する。  
A心身の健康のこと  
 見知らぬ土地で避難生活を続けていく上で、「心身の健康」は大前提となる。慣れない都会生活のために、大小さまざまな日常の問題や 生活苦に悩まされることがありうる。そうした悩みはストレスとなって島民の健康を損なわせる危険もある。そこで、村は島民の生活実態を確認し、島民の持つ悩みにできる限り相談にのるためのシステムを確立する。  
B仕事のこと  
 島外で仕事の場を確保することは、長引く避難生活の生活基盤を安定させるために不可欠な問題である。そこで、ホームページなどにより、島外での仕事の情報をできる限り提供していく。また、帰島に向けて必要となる三宅島での事業については、村は積極的に島民に島での仕事の場を提供するように東京都を窓ロにして働きかける。
 同時に、島民の皆さんも帰島後の仕事をにらんで、今のうちから新しい職能の修得や事業の企画を始める努カをお願いする。  
C教育のこと  
 子どもは三宅島の将来を担う大事な「宝」である。島外で暮らしていても、子どもたちが三宅島のことを誇りにし、これからの島をどうするかをどれだけ真剣に考えるかに、島の将来はかかっている。しかし、小学校では三宅島の子どもたちだけの学級はなくなった、あと3 年で三宅島の子どもたちだけの中学校もなくなる可能性がある。「互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識のある村民」、「全国の人々か らの支援に対する感謝の心を持つとともに積極的に社会に貢献しようとする村民」、「常に前向きに考え、逆境の中にあっても自らの個性 と想像カを伸長しようとする意欲を持つ村民」という『三宅村教育委員会の教育目標」及び「人権尊重の精神」と「社会貢献の精神」の育成、「豊かな個性」と「想像カ」の伸長、秋川での特性を活かした学校経営の推進と村民の学習機会の確保といった『三宅村教育委員会の基本方針」を前提に、教育施策を積極的に推進していく。  
DI T(情報通信技術)化  
 インターネットに代表されるI Tの急速な進歩が、情報伝達の環境を劇的に変化させ、人々のライフスタイルやビジネススタイルを大きく変えつつある。大量の情報が高速、双方向に交流することが可能となり、時間と空間の制約を超えて、多くの人々が直接コミュニケーションを図る事が可能になる。
 三宅島においては、復興を支える社会基盤として全島に光ファイバ−ケーブルなどを敷設し、村役場を中心として福祉施設や観光施設などの各公共施設と個人住宅を大容量高速通信網によって結ぶ地域公共ネットワークを整備し、村政を島民に限りなく近づけることを検討する。
 I Tは、三宅村の生活再建だけでなく、地域振興や防災しまづくり にも活用することを検討する。

 このような試みを確認しながら,これからの島民の生活再建をより積極的に推進するために村は島民と協働して全カを尽くす。  
(帰島までに整えておくこと)  
 噴火に伴う泥流災害で土地や家屋を失った人をはじめとする多様な被災者は多い。また、長期化する火山活動の影響や避難生活などで生活に多大な影響を被った住民も多数いる。こういった人たちへの支援を第一に考え、住宅の自立再建への支援や新規村営住宅の建設などを行う。
 避難生活が長引くことにより、避難先で新たなコミュニテイが芽生 えつつある。そこで、島外避難のなかでつちかわれつつある人と人のつながりも考慮して、帰島後の新たなコミュニティのあり方について 検討する。
 三宅島では、65歳以上のお年寄りが約3割を占める「高齢社会」であり、今後もこの傾向は続くと考えられる。そのため、この避難中にも介護を必要とする人が増えていく。そこで、それらお年寄りの生活を支えていくため、これまで以上に保健や福祉、医療の充実を目指していき、家庭、地域社会などの支援を拡充する。また、帰島を見据えて高齢者の在宅支援の充実はもとより高齢者施設等の拡充と介護にかかわる人材育成に努める。島外の高齢者についても受け入れることを検討する。  
 三宅村には、小学校が3校、中学校が3校、都立高校が1校ある。 学校運営の効率化や建物施設の有効利用という面や、生徒の学習環境 を維持するという面、帰島後の三宅村の復興の方向などを踏まえ、小学校、中学校、高等学校についてはその教育システムあり方を検討する。
 島民の生活再建には、島民の努カが必要なことはもちろんだが、それだけで十分だとはいいがたい。そのため、島外からのポランティアの協カが不可欠である。ポランティアの協カを得るには、日頃からの連携が前提であり、ポランティアの受け入れ態勢に関して検討する。  
(帰島後に実施すべきこと)  
 学校教育は、島の伝統。文化を継承するとともに、郷土愛に満ちた 三宅島民としての自覚と誇りを育み、三宅島の環境を活かした教育プログラムを作るなどして、小学校・中学校・高等学校全体を通して一貫した教育を進める。  
 就労対策としては、帰島後の島民の生活を軌道に乗せるため、復旧・復興事業に積極的に島民を雇用するとともに、村の既存産業を連携させていく。また、産業別の生活再建策を検討していく。  
(2)地域振興  
〜世界|こ誇る観光地としての三宅島の将来計画〜
  噴火災害により完全にストッブした経済産業活動をすみやかに回復させ活性化を図る。その際、三宅島の大部分の産業は何らかの形で観光と関連があるため、地域振興の基軸を「観光産業」とし、他の漁業、農業、林業、商工業などの産業は「観光産業」に誘発されたかたちでの振興、掘り起こしを行うことにより、より効果的な発展を図る。
 地域振興を推進するためには、これを担う人材が不可欠である。そのためには、三宅島に生まれ、育った全ての人が、活き活きと働くことができるよう環境を整備する。同時に、三宅島の振興に貢献したいという志を持つならぱ、他所で生まれ、育ったいわゆるI夕一ンの人たちも積極的に受け入れていく。
(島外での生活が続く中でも、今すぐに取り組み始めるぺきこと)  
 これからの観光地の魅カは、島にいる時間を充実したものにするソフトウェアの開発にかかっている。地元の素材に地元の人の手をかけ、三宅島だけにしかないさまざまな商品やサービスをどれだけ豊かに 持つことができるかにかかっている。たとえぱ、手作りの健康食品の 販売、三宅島の特産物を使った高い技術に基づく、水産加工品や植物染めなどの商品の開発、郷土料理の開発、祭りやイベントの開発など、 三宅島らしさの発見は、全島避難という困難を逆手にとり、これを好機と受け取って、島外で生活しているうちから始めることができる。 また、そうした活動に高齢者を積極的に活用していくことは人材の活 用と同時に、現時点での生活支援にもつながる。ただし、このような、新たな取り組みを行うにあたつては、採算性の検討を必ず行わなくてはならない。今から、行政、経済5団体及び島民は、経済感覚、経営 感覚を身に着ける必要がある。  
 観光産業においては、観光客を観光地に呼び寄せるための観光情報 が重要な役割をはたす。I T化が進むなかで、これからはインターネ ット等を用いた情報の受発信を推進することが不可欠であり、全島に 敷設する光ファイバーケーブルなどを活用することを検討する。さら に、この光ファイバーケーブルなどを活用して、三宅島の全体をエコ ミュージアム化し、三宅島の観光資源を点から線、線から面へと発展 的につないでいくことを検討する。  
(帰島後に実施すべきこと)
@観光  
 三宅島の特徴は、東京から数時間でコンクリートとアスファルトの大都会から自然豊かな島に場面転換できることである。
 観光については、この特徴を活かし、三宅島の自然のすぱらしさ、厳しさを体感してもらうエコツーリズム(自然環境などを損なわずに 行う観光事業)を基本とするとともに、三宅島の人々の暖かいホスピタリティ(もてなしの心)に触れることを他にない観光の魅カとする。
 そのため噴火により荒廃した高山植物や海岸植物、四季を通じて豊かな緑を誇っていた広葉樹林などの自然の回復を図る。  
 観光資源の開発や観光施設の整備に当たっては、三宅島を訪れる観 光客のニーズの把握に努め、観光客の立場で検討し、開発や整備を図る。  
 三宅島の特徴である火山との共生を目指し、自然の雄大さや荒々しさを実感できる火山公園など、観光資源として活用する。海について は美しい自然を利用し、三宅島ならではの付加価値を取り入れた海洋性レクレーションを生み出していく。  
 体験農業や体験漁業、遊漁事業、森林探索など他の産業とのつながりを強め、これまで、夏季(7・8月)が中心の観光客を、一年を通して呼べるようにしていく。  
 体験、見学、ショッピングや広場でのレクリエーション活動など、 複合的な観光拠点とし、観光牧場を整備していく。
 景観を大切にし、観光客にも魅カ的なまち並みとなることを目指す。  
 交通アクセスについては、行楽プランなどを安心して組めるよう、 ジェット機対応型空港や大型船接岸港湾施設などを整備し、就航率の アップや時間短縮といった来島者の利便性の向上を図る。  
A漁業  
 漁業協同組合の効率的な運営を行い、漁業権行使の見直しや水産加工業など関連産業との連携強化による生産性の向上、体験漁業への取り組みなどを行う。
 既存漁場の改善や栽培漁業、増殖場を整備するなどして漁獲を安定化させ経営体質の強化を図る。  
 新鮮な魚を供給するなどの流通改善で三宅島ブランドを確立し付加価値を高めていくなど、漁業の総合的な振興の推進に努める。  
B農業  
 壊滅的な被害を被った農地・農業用施設の復旧整備を早急に行ラ。 降灰の除去を行い、畑地の再生、新しい畑地の創生を行い、営農形態 を見直して安定農業を目指す。  
 観光面との連携を図り、島内流通を活発にするとともに三宅島ブランドを育て島外への安定的な出荷体制を整える。  
 畜産業は、ふれあい牧場のような観光産業とリンクすることにより効果を倍増させる。
C商工業  
 住民に対し、島内生産物の安定供給を図るとともに、これまでもあ った特産品の復活や新たな特産品を開発するなどして、観光客にとっ ても魅カのある商工業を目指し、消費拡大や流通経路の確立、滞在施 設の質の向上など産業基盤整備に取り組む。  
D林業  
 噴火により壊滅的な被害を受けた植林地は早急に緑化を図っていく。また、自然林は自然のカに回復をまかせるべき区域と人工的に復元すべき区域に分け、中長期的な整備を図る。  観光と夕イアッブした植林事業も進める。  
E人材の確保と育成  
一度島を離れた人材や島外からの若い人材を積極的に呼び寄せ、島への定着を図い 地域振興へのマンパワー(労働カ)の充実を図る。  
 高齢者は、農地・森林などの復旧環境整備のためには、必要不可欠な人材であり、その活用を積極的に図る。  
 各産業の振興のため、専門知識を修得するための講習会を支援する など人材の育成!こ努める。さらに長期的な視野(こたって村の観光の中 核になる人材を育成するために、人材育成基金制度を検討する。
(3)防災しまづくり  
〜災害に強く、健康で豊かなくらしを支える社会基盤施設の整備計画〜 
 三宅島と災害のかかわりは深い。雄山の噴火災害は最近20年程度の間隔でおきている。また、21世紀半ばまでに発生が確実視されている東海地震に伴う津波災害の脅威のために、平成14年には「地震防災対策強化地域」に指定される予定である。こうした自然の脅威の存在を+分考慮して、今後のしまづくりにおいては、自然との調和を図りながら居住者が不安のない生活をおくれる安心な島を形成し、観光客にとって最大限の安全を提供する。  
(島外での生活が続く中でも、今すぐに取り組み始めるべきこと)  
 行政の最も基本的な役割は、島民と観光客の生命の安全を確保することである。そのため、三宅島火山防災マップなどを基にして、災害 に対して安全な三宅島の土地利用のあり方について総合的に検討する。
 全島に敷設する光ファイバーケーブルなどを活用し、各家庭や島内 の主要施設に接続し、きめの細かい防災情報をリアルタイムに島民や観光客に提供することを検討する。
 島を訪れる観光客を災害から守ることは、最大の義務であり、災害時の観光客対応体制を整備する。その第一歩として、土地に不慣れな 観光客はもとより、高齢者や障害者も含めた全島民が安全に避難できるため、避難マニュアルを作成する。  
 災害時にも、信頼できるアクセスを確保することは、防災しまづくりにとって極めて重要である。三宅島の気候の特徴は、秋から冬にかけては季節風による西風が強く航空機の離発着を困難にしている。また、定期船の出入港は、現在2ケ所しかなく、低気圧の通過による波 浪の影響などで欠航することもある。そこで、噴火時に島民と観光客が安全に遅滞なく避難することができ、緊急物資が円滑に供給できる よう、天候に左右されにくい空港やへリボート、避難港及びそれらの施設へのアクセス道路などの道路交通施設を早急に整備する。  
(帰島までに整えておくこと)  
 道路や水道などのインフラストラクチャーは、島民の日常生活や経 済活動を支える基盤として欠くことのできないものである。今回の噴 火災害により被災した既存施設の復旧や砂防施設の整備を着実に進めるとともに、今後のインフラストラクチャーの整備にあたっては、 今回の噴火のニ次災害や将来の災害発生の軽減防止策を講じる。  
 小規模な災害に対しては、各地区にこれまである避難施設に火山ガ ス対策を付加し、備蓄倉庫などの整備も行い、施設の充実を図つてい く。 山腹の木々は火山ガスなどの影響で枯れた状態である。このままで は、長期間にわたり泥流が発生する危険性がある。そこで、治山事業 や緑化事業を推進し、森林回復を促進することで泥流災害の軽減を図る。  
(帰島後に実施すべきこと)  
 噴火により、多くの施設が停電のため機能が麻痘状態になった。そこで、噴火などの災害時にも公共施設の機能の低下が生じることのな いよう、自然エネルギーなどを利用した発電施設を整備する。  
 避難所生活中、道路が寸断され避難所が孤立し食料などの物資を運 搬することができなくなった。そのため、全島民が島外避難するよう な火山ガスに起因する大災害に備え、島民と観光客が集結することができ、安全かつ迅速に島外避難できる、水・食料・医療・電カ施設などが整った避難施設を整備する。また、今回の噴火を教訓として、伊豆諸島全体を視野に入れて、全島民が結集できる島外避難の可能性について検討する。  
 三宅島は、日本の中でも最も活動的な火山島であり、貴重な火山防災研究の場所である。そこで、今回の噴火災害を契機として、三宅島のシンボル的な施設として火山防災研究所などを誘致し、今後の防災に役立てる。  
4 基本計画策定の進め方
(1)島民のアイデアを取り入れる  
 三宅島の復興の主役は、島で生活する島民である。そのため、復興計画の策定には、住民参加が不可欠であり、島民や関係者のアイデアを広く取り入れ、基本計画を策定する。
 また、基本的な構想(案)や基本計画(案)がまとまった段階で、住民や関係機関などに公開し、意見陳述を書面で受け付け、最終案をまとめることとする。  
(2)財源確保の方策の検討  
 三宅島の復興のためには、膨大な費用が必要となる。公共事業は、公的資金の投入が可能であるが、被災者個人の財産への公的な補償支援が現行では難しいという大きな壁がある。しかし、避難の長期化に伴い被災者個人の財政的な負担では解決しえないものが多くなって きた。復興を推進するためにはこれら財源をどのように確保するかについて十分理解し、研究する必要がある。  
(3)社会経済情勢の変化への対応  
 時間とともに、社会経済情勢は刻々と変化する。三宅村は、その変化に対応するため、三宅村復興基本計画を、2年毎に見直しを行う。  

この記事は4/13の広報にも同封されています。
また、スキャナーで取り込んだため文字の間違いがあるかもしれませんのでご了承ください。

島魂2002 http://miyakejima.net